1クリック劇場2 #05「キライ」

キライ

 ルナの看病をシャアラに譲ったメノリは、みんなの家のリビングから気遣わしげに外を見渡した。
 海鳥の卵を取りに行ったカオルだけが、まだ戻ってこない。
 あの崖の危険さはメノリが一番よく承知していた。しかも折悪しく外は雨。
 探しに行くべきかどうか思案していると、梯子の軋む音がして、卵を抱えたカオルが姿を現した。
 メノリはほっとしてカオルを出迎えた。
「カオル、無事だったか」
「ああ」
「お前で最後だ。あとは全員戻っている。――大変だっただろう」
「たいしたことはない」
「怪我はないか? あの崖は、足場は少ないし岩は脆いし」
「別に」
「……足元が崩れて転落しかけたり、片手でぶら下がったり、張り出した岩場で宙づりになったり」
「いや」
「――片手懸垂したとか掴まるところがなかったとか何度も滑り落ちたとか指先でぶら下がったとか」
 カオルは素っ気なく言った。
「そんなヘマはしない」
「…………」
「……何だ」
「お前なんか嫌いだ」
「は?」

 嗚呼カオメノ大失敗。

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