「よっぽど大事なリュックのようだね」
「ありがとう、ベル」
滝の下の岩場で、ベルとルナは微笑みあった。
ルナはしっかりと父との思い出が詰まったリュックを抱きかかえた。
イカダは失ってしまったが、二人とも怪我をせずに滝を越えられたのは幸運だった。リュックも、勿論中の荷物も無事だ。これで何とか探検を続けられるだろう。
その時、上流の方から思いがけない声がした。
「おおーい、大丈夫かー?」
そういえばイカダには三人が乗っていたのだった。
「ベル」
ハワードの呼びかけに応えながら、ルナは視線を正面に向けたままベルに囁いた。
「ハワードのこと、忘れてたのはナイショね」
「わかった」
満面の笑みでハワードを迎える二人であった。