1クリック劇場2 #06「身長差」

身長差

「まずいぞ、もうすぐルナがやってくる。早く代役を決めないと」
 メノリが言うと、皆の視線が一斉にカオルを振り返った。

 ことの発端はハワードの捻挫だった。
 ルナを励ますために秘密裏に計画した船上パーティー、その開始直前のことだ。怪我自体はそう酷いものではなく、きちんと手当すればすぐにハレも引くと思われた。しかし常ならいざ知らず、今日のハワードは余興劇のヒロインという大任を負っている身であった。もうルナにはチャコが声をかけてしまっている。早急に代役を決定し、変更事項の打ち合わせをする必要があった。
 そこで、ちょうど甲板に上がってきたカオルに白羽の矢が立ったのだった。

「身長差からいって俺やシンゴがあの衣装を着るのは無理だ」
「花の精は私の役だ。このために剣の稽古もしたんだからな。今更譲れるか」
「悪いなカオル。イテテテテ」
「台詞なら簡単だし、すぐ覚えられるよ」
「自動操縦だから安心ね」
「きっとよく似合うと思うよ」
 カオルのささやかな反論はあっさりと封じられた。
 そしてカオルの足元にすり寄ったチャコが、トドメのように上目遣いで言う。
「ル・ナ・の、ためやでぇ〜」

 いっそ海にでも飛び込んでしまいたいカオルであった。

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