疲れているはずなのに、何故か眠れない夜というものがある。
みんなの家の女子部屋でいたずらに寝返りを繰り返していたルナは、そっと隣のベッドに寝ているシャアラに声をかけた。
「シャアラ、起きてる……?」
「うん。ルナも眠れないの?」
「何だか目が冴えちゃって」
部屋の向こう端からもいらえがあった。
「私も起きているぞ」
「メノリも? ――ねえシャアラ、何かお話してくれない?」
「そうねえ……、こんなのはどうかしら」
そう言ってシャアラは語り始めた。
あるコロニーに一人の女の子がいました。
その少女は長い髪が自慢で、いつも髪を櫛で梳いていました。
ある日、少女は片方の目に痛みを感じたので、鏡で見てみました。目の端に何か黒いものが見えます。睫かと思って少女は目をこすりました。
出てきたのは、何と長い長い髪の毛でした。
その髪の毛はしっかりと眼球に絡みついていたので、しまいには引っ張った拍子にコロリと眼球が取れて落ちてしまいました。
コロコロコロコロ、どこまでも眼球は転がっていきます。
だから今でも少女は自分の眼球を探し続けているんですって。
――ほら、少女の足音が!
ミシリ……、と家が軋んだ。
一拍おいて、暗闇の中、盛大に悲鳴が上がる。
特筆すべきは、その第一声は男子部屋から聞こえてきた、ということだろうか。