「一段落したようだから、俺、ハワードを探してくるよ」
シャワー室と玄関の完成をみて、ベルが言った。
「ああ、行くことないで。ハラ減ったら帰ってくるわ」
放っておけと言うチャコに、メノリも自業自得とばかりに頷く。
「たまにはいい薬だ。……こう言ってはなんだが、ベルは少しハワードに甘すぎるんじゃないか?」
「うん……、それはそうかもしれないけど」
二人の反対に気分を害した風もなく、ベルは静かに口を開いた。
「でも食事時間にこれみよがしに隅でウロウロされても鬱陶しいし」
「う」
「それに、ハワードじゃオオトカゲに襲われても自分の身を守れない。下手に大怪我されたり、それとも食い荒らされた死骸なんか見つけても始末に困るし」
「あ」
「だから、早めに迎えに行った方が面倒が少なくて済むと思うんだ」
淡々と語ったベルは、淡々と皆の顔を見渡した。
「勿論、どうしても止めた方がいいって言うなら止めておくけど」
メノリが慌てて手を振る。
「い、いや、是非連れてきてくれ」
「せやな。生きてるうちに頼むわ」
「ベルって凄いね……」
歩み去るベルの背中を見ながら、ぽつりとシンゴが呟いた。
「そうだな」
同意するメノリの隣で、ルナがくすっと笑い、明るく言った。
「ほーんと、ベルってハワードのことよく判ってるのね。喧嘩するほど仲がいいって、ああいうのを言うのかしら」
「……ルナもある意味凄いよね」
「そうだな……」
シャアラとチャコを連れて食事の準備に向かうルナの背中を見ながら、もはや立ちつくすしかないシンゴとメノリであった。