妄想倉庫「雪明かり」

雪明かり

「だいぶ暗くなってきたわ」
 帰りの遅い仲間を心配して外に出ていたルナが、スターホールの扉を閉めながら言った。
「まだハワード達は戻ってこないのか?」
「うん。ちょっとそのあたりまで出てみたけど、まだみたい」
 メノリが顔をしかめる。
「いつもより随分遅いな」
「まあそのうち帰ってくるやろ。ベルやカオルも一緒なんや。そう簡単にどうこうなるような連中とちゃうやろ」
「それにしても雪が積もっていると随分外が明るいのね」
「雪明かりっちゅーやつやな」
「雪明かり?」
 シンゴが解説する。
「雪が光を乱反射させるから、それで明るく感じるんだよ。今日は星も出てるしね」
「ずっと前に古い映画で見たクリスマスの夜みたいだわ」
 覗き窓から外を見ながらシャアラが言う。しかし振り返った彼女の表情は暗かった。
「……私達、本当にコロニーに帰れるのかしら」
「どうしたのシャアラ。急に」
「だって誰も知らないこんなところで雪に閉じこめられて。この冬はいつ終わるの? 私達ずっとこのままなの?」
「そのためにチャコやシンゴにいろいろ調べてもらっているじゃない」
「でも」
「落ち着けシャアラ。それに、どうやらサンタのお帰りのようだぞ」
 シャアラと入れ替わりに覗き窓の前に立っていたメノリが言った。
「今日は何か収穫があったようだ」
「本当?」
「ああ。少しはマトモな食事にありつけそうだな」
「やったあ」
 シンゴが歓声をあげる。
「ねえシャアラ」
 ルナは、立ちつくすシャアラの肩に手を掛けその顔を覗き込んだ。
「私達一人一人はとても弱いわ。でもみんなで力を合わせてここまでやってこれたじゃない。きっと大丈夫よ。諦めないでいれば、いつかきっとコロニーに帰れる日が来るわ。だから、それまで一緒に頑張ろう?」
 シャアラは涙を拭って頷いた。
「うん……、ごめんねルナ。弱気になったりして」
「さあ、サンタ達のお出迎えだ」
 メノリが扉を開ける。暖かな光があたりを照らし出した。
 向こうからは、はしゃいだハワードの声が聞こえてきていた。

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