1クリック劇場 #07「フェアリーレイク」

フェアリーレイク

「昨日、おっかしな夢を見てさあ」
 ハンモックから滑り降りながらハワードが言った。
「どんな?」
 シンゴが応える。朝が早いベルとカオルはもう男子部屋を出ていた。
「あなたが湖に落としたのはこの椅子ですか、それともこの椅子ですか――ってさ、誰かが僕に聞くんだ。あれだよあれ、金のがちょう」
「それを言うなら金の斧銀の斧。全然違うじゃない」
「いいじゃないか、ちょっと間違えただけだろ」
「それでハワードは何て答えたのさ」
「十段階リクライニングシート。総天然革張り。マッサージ機能付き」
「なにそれ。嘘ばっかり」
「嘘なもんか。僕にふさわしいのはそういう椅子だからな。本当のことを言ったまでさ」
「――では、これはお前の椅子という訳だな」
 言い合いながらリビングに出てきたハワードとシンゴの会話に割り込んだのはメノリだった。

 昨日シャトルの座席を置いた場所に、『審問椅子』が鎮座ましましていた。

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