1クリック劇場 #20「力」

「ベルって凄い力持ちなのね。びっくりしちゃった」
 人食い植物に遭遇した話を皆に聞かせながら、ルナは、倒木を投げ飛ばしたベルに素直に感嘆の声を寄せた。
「いや、あの時は必死だったから」
「僕、そういうの何て言うか知ってるよ」
 シンゴが口を挟んだ。
「『馬鹿の火事場力』って言うんだよね」
 ベルの口がポカンと開いた。
「タンスかついだりするやつね」
 ルナの言葉に、ベルの顎がカクンと落ちた。
「ベル、もし良かったら今度シャトルをかついでみせてくれない? 大丈夫、ベルならきっと出来るわ」
「わあ僕も見たい。ベル、やってみせてよ」
 ルナとシンゴはにこにこ笑いながらベルを見上げている。

 『お前ら、飛び級だの特待生だのって嘘だろう』

 叫びたい気持ちをベルはぐっと堪えた。
 世の中、思っていることを正直に言えたら苦労はないのだ。

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