1クリック劇場 #16「涙」

 低い嗚咽はいつしか消えていた。
 ふいに立ち上がったカオルに、ルナも立ち上がりかける。
「ついてくるな!」
 怒鳴り声にルナの身体が竦んだ。
 カオルは振り返らないまま、やや声を和らげ、
「――外の様子を見てくるだけだ。心配するな」
 そう言い置いて出ていった。

 ルナは抱え込んだ膝の間に顔をうずめた。
 無理に聞きだした訳ではない。
 なのに、思いがけないカオルの涙に、ルナはそれが自分の責任のような気がしてならなかった。
 どうしよう――

 そして。
 外に出たカオルは思い切り鼻をかんでいた。

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