シャアラはぼんやりと眼を覚ました。
女子部屋の入口から光が射し込んでいる。
夜通し降っていた雨は上がったようだ。
ここのところの晴天続きでヘタりかけていた畑の作物には、いい恵みの雨となったことだろう。
それと、シャアラがみんなの家の裏手に生えているのを見つけて、何となく気にとめて水やりをしてきた植物。成長の速さでシャアラを驚かせたあの花も、これで元気を取り戻すだろう。
(赤い、キレイな花だった。後でみんなの家に飾ろう)
そんなことを思いながら、シャアラはもぞもぞと寝返りをうった。起きなければいけない時間なのだろうが、どうしても目が開かない。
(もう少しだけ……)
再び眠りの淵に差しかかった耳に、かすかに叫び声やバタバタした足音が聞こえたような気がした。
(外が騒がしいけど何かしら……)
花が一夜にして大成長を遂げ、立派な人食い植物になっていたことを知る由もないシャアラであった。