シャアラは、初めて大いなる木の上に昇った日のことをはっきり覚えていた。
みんなの家を造り始めた頃のことだ。梯子を登って恐る恐る、土台代わりに木の枝に渡したシャトルの部品の上に立つと、シャアラの視界が大きく開けた。遠く高く湖の彼方まで見渡せる。まるで自分が大きくなったような気がした。あまりの驚きに、危うく土台のヘリから転落しそうになったほどだ。そして頭上を振り仰げば、大きく広がった枝や豊かに茂る葉が厳しい陽射しを遮り優しい木陰を作り出してくれていた。
フェアリーレイクとシャアラが命名した湖に面した場所はみんなの家のリビングに割り当てられ、シャアラのお気に入りの場所の一つとなった。
今日も、食糧集めに出たみんなの帰りを待ちながら、シャアラはリビングから湖を見渡していた。こうしていると大いなる木に、守られている、と思う。
(大きくてどっしりしてて、何か優しく包んでくれる感じ……)
(ベルに似てる……)
思わぬ連想をして、人知れずシャアラは真っ赤になった。
翌日。シャアラはベルを見つけるともじもじしながら尋ねた。
「ねえベル、……登ってもいい?」
「は?」
そして、エンディングラストへ。