1クリック劇場4 #01「(笑)」

(笑)

「ま、僕がちょっと本気を出せばこんなもんだね」

 滔々とハワードの自慢話が続いていた。
 みんなの家へと続く道でのことだった。その日めずらしく一緒に森に出かけたカオルとハワードだったが、一日かけた食料探しは、ハワードは両手に一杯の果物、カオルはまったくの手ぶら、という対称的な結果に終わっていた。
 それだけにハワードの手柄話は止まるところを知らない。
「能ある鷹は爪を隠す、って言うだろ。僕は何事においても控えめなタチだからね。日頃はおとなしーくしてる訳さ」
「ハワード」
 ふと、黙々とハワードの後を歩いていたカオルが先を行くハワードの名を呼んだ。
 が、ハワードは振り返る気配すら見せず、ずんずんと歩いてゆく。
「凡人達にあんまり僕との差を見せつけるのも気の毒だからな。だけど勘違いしてもらっちゃ困るのは、僕とお前らとの差ははっきりしてるってことだ」
「ハワード」
「だから僕がちょっと本気を出せば、こんな果物ぐらい見つけだすのは簡単なことなのさ」
「ハワード」
「僕が見つけたこの果物も当然僕が独占してしかるべきものだけど、まあ可哀想だからお前らにも恵んでやるよ。僕の寛大さに感謝するんだな」
「…………」
 カオルは三度ハワードの名を呼び、以降沈黙した。
 森の中には延々とハワードの声が響いている。

 沢山の果物を抱えてみんなの家へと凱旋したハワードは、皆に(特にチャコに)感嘆の声でもって出むかえられた。しかしそれはすぐに笑い声に取って代わった。
 何故なら。
 ハワードの頭にべったりと鳥のフンがついていたからである。

「見てたんなら、何とか言えよ、カオル!」
「人の話を聞かないお前が悪い」

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