1クリック劇場4 #10「同い年」

同い年

 穏やかな夕暮れだった。
 外のテーブルでの食事も済み、皿洗い当番は食器を抱えて水場へと姿を消していた。いつもならその他の者はそろそろみんなの家に引き上げる頃合いだったが、ハワードがカオルに背くらべをしようと言いだし、そしてその立会人をたまたま視界に入ったチャコに命じたので、ハワードとカオル、チャコはその場に居残っていた。
「どっちも同じくらいとちゃうんか」
 しかしハワードとカオルをしげしげと見比べた上でチャコが出した結論は、ハワードのお気に召さなかったらしい。
「よく見ろよ。どう見ても僕の方が大きいだろ」
「んなこと言われたかて」
「ハワード、かかとが浮いてる」
「……うるさいな」
 早速揉めだす二人と一匹。
「どうかしたの?」
 そこに声をかけてきたのは、火の始末を終えたベルだった。
 比較するまでもなく、ベルは二人よりタテもヨコも大きい。図ったわけでもあるまいに揃って視線を外し押し黙るハワードとカオルに笑いをかみ殺しながら、チャコはベルに向かって「何でもないねん」と小さな手を振った。
「じゃあ俺は明日使う薪の準備をしておくから」
「――ま、ベルは僕たちより二つも年上だからな。その頃にはカオルはともかく、僕だってあのくらいになってるさ」
 ベルがその場を去るのを見届けてハワードが小声で言う。彼は何事であれ自分が一番でないと気が済まない性質だ。だが、目ざといチャコは、ハワードの言葉にこっそりカオルが頷くのを見逃さなかった。寡黙な彼もそれなりに思うところがあるらしい。
 性格や資質は正反対といっていいほど異なるが、同い年だけあってやはりそれ相応に似ている二人をチャコは微笑ましい気持ちで見やった。

「けど、男は大きさだけやないで。持久力とテクニックの方がよっぽど重要や」
「何の話だ、何の」

ハワード&カオルコンビスキーさんに10のお題。トップへ