青い光線銃は、あの時、正気に返ったハワードが手放したのをカオルがどさくさに紛れて拾っておいたものだった。何の警告もなくメインルームから持ち出せたのは意外だったが、どうせあのメインコンピュータにはバレているのだろう。
それをハワードに撃たせてみたのは、ハワードが銃を見てどのような反応を見せるか、それで思考を乗っ取られていた時の記憶をどれだけ残しているか確認しておきたかったからだ。それともう一つ。ナノマシンの支配下にあったハワードは弓や銃を実に巧みに操った。もしあの腕前が本物なら、こちらの攻撃力として十分計算できる。
――と、多分に打算めいた考えがあってのことだったが。
「何だよ、おかしかったら笑えばいいだろう!」
大きく的を外してバツが悪いのか、頬を赤らめてむくれてみせる。その子供っぽい仕草があまりにもハワードらしくて、カオルはつい笑ってしまった。
「おかえり、ハワード」
何もかもどうでもよくなって、それだけ言うとカオルはその場を離れた。
ハワードに頼らずとも、皆のことはこれまでどおり自分が守ればいい。
一同を乗せ飛行艇を発進させると、カオルは銃を遥か彼方の地上に投げ捨てた。隣に座るルナが気遣わしげな視線を向けてくるのに、俺達には必要ない、と短く告げる。そう、こんなものは自分達には必要ない。こんな誰かを傷つけてしまうかもしれないものは。
それにしても。
そっぽを向くハワードの姿は、記憶の中のハワードとまったく変わらなくて、そして何故かそれがとても嬉しく感じられてしまったのだが。馬鹿な子ほど可愛いというが、もしかしてこれがそうなのだろうかと、ふと思うカオルだった。