1クリック劇場3 #01「闇」

「あああ、あの、これ」
 足音に気づいたシャアラが慌てて立ち上がる。
「掃除をしていたら」
 カオルは皆まで聞かずに、シャアラがおろおろと差し出したIDカードを奪おうとした。
 しかし、その手は空を切った。
 すっとカオルの目が細くなる。
 もう一度、腕を伸ばす。
 絶妙のタイミングでシャアラがそれをかわす。
 二度三度と、無言の攻防が続いた。
 いつしか額に汗を浮かべているのはカオルの方だった。
「ちっ」
 強引にカードを引ったくろうとしたカオルの隙を捉えて、シャアラがその背後に回る。
 ピタリとカードがカオルの喉元に突きつけられた。
 シャアラの眼鏡が妖しく光る。
「このカードを返してほしかったら、洗いざらいしゃべることね」

 ゴシップハンター・シャアラ。
 話のネタになると直感したものは逃さない、知る人ぞ知るシャアラの二つ名であった。

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