1クリック劇場3 #08「仲間」

仲間

 額にネジが刺さった奇態なロボットの案内によって、人ひとりギリギリ通れるかどうかという狭い通路を抜けた後。
「ルナ、服が汚れてるぞ」
 ふとルナを見やったカオルが言った。
「えっ? あ、ああごめんなさい。ありがとう」
 ルナは、カオルの言葉に自分の服を見下ろし、僅かに赤くなって胸元の汚れを払う。その様子を横で見ていたアダムがメノリを振り返り、そして素朴な疑問を投げかけた。
「ねえ、どうしてルナは服が汚くなったのに、メノリの服は汚れてないの?」
 微妙な沈黙が落ちた。

 ルナは曖昧に笑いつつ、場を取りなすように言った。
「ほ、ほら、私最近太っちゃって。それであんな狭い通路を通ったから、服が汚れちゃったのね」
「つまりメノリよりルナの方がデカイっちゅーことやな。……胸が」
「チャコ!」
 ズバリと核心を突くペットロボットをたしなめようとしたルナは、背後からの視線を感じて、そろそろと振り返った。
「……メノリ?」
 微妙に能面めいた表情でルナの視線を受け止めたメノリは、
「何だ。言いたいことがあるならハッキリ言え」
「えっ……あ、あのね、えっとー……」
 もごもご呟くルナにフンと鼻を鳴らすと、メノリは頭をそびやかして一人、歩を進めた。ルナ達を追い抜きカオルの前に出る。
「まったくこの非常時にくだらない」
 憤然として歩く、そのメノリの後ろ姿を見たカオルは言った。
「メノリ、服が汚れてるぞ」
 ギョッとして振り返ったメノリは首を捻って自分の後ろ姿を確認し、慌ててスカートを後ろ手で押さえるとカオルに向き直った。
「お前は、いったいどこを見ているんだ!?」
「何のことだ」
「こんな時に破廉恥な奴だな。恥を知れ、恥を」
「……言っている意味が判らないんだが」

「どういうこと?」
 かみ合わない口論を始めたメノリとカオルを指して、アダムがチャコに尋ねた。
「つまりルナは胸が大きくて、メノリは尻が大きいっちゅーことやな。――意外とチェック厳しいなカオル」
「へー、よく見てるんだね、カオル」
 シンゴが素直に感心する。
「いや、カオルはそういう意味で言ったんじゃないと思うけど……」
 邪推に満ちたチャコの言葉を訂正しようとするベル。
「もうチャコったらいい加減にして。メノリも落ち着いて」
 ルナはメノリとカオルの間に割って入った。
 足を止めた一同にしびれを切らしたのかネジ付きロボットが大声で喚く。
「スデチッコスデチッコ!」
「で、メノリは何であんなに怒ってるの?」
「シンゴにはちょっと早い話やったかな」
「ボクもよく判んない」
「アダムはまだ判らなくていいんだよ」
「カスマテイキシナハ!」
「我々はコロニーに帰ることを第一の目的としているんだぞ。それを何だ、お前は」
「だからどうしてそうなるんだ。……ルナ、メノリは情緒不安定な時期なのか?」
「もう、カオルもヘンなことばっかり言わないで!」

 結局、ルナから1時間の正座を言い渡されてしまうカオルであった。

「……どうしてこうなる」
「阿呆やなぁ。ベル、ちっとはカオルにレクチャーしたらんかい」
「ええっ、お、俺!?」

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