1クリック劇場3 #06「月」

 先日、ルナが体調不良で寝込んだ。更にその前にはシンゴも一度倒れたと聞く。家を作り畑を耕し、次第にこの星での生活も軌道に乗ってきたとはいえ、毎日の重労働にみな疲労がたまってきている。少ない人数で如何に効率的に生産性を向上させてゆくかが、この先、生き延びてゆくための鍵となることは間違いない。
 夜中にふと眼を覚ましたカオルは、昼間思いついたものの、時間がなくてできなかったある事を試してみようと起きあがった。
 幸い、雲もない夜空には満月が皓々と輝き、灯りの必要もない。
 みんなの家を出ると、カオルは家の裏手にある資材置場から余った竹を一本選んだ。節を抜き、胴に一列に穴を開ける。上部にも穴を二つ開け、木のツルを通して持ち手とする。フェアリーレイクから別の容器に水を汲んできて、畑の真ん中に立ち、穴を開けた竹に水を移し替えると素早く水平に振り回す。
 人間スプリンクラーの完成であった。
 他の仲間は知らないことだが、宇宙飛行士訓練生であったカオルにはこの程度の回転運動は造作もない。これで現在二人がかりでの作業を一人で行うことが出来る。
 竹の筒に開ける穴を増やした方がいいのか。もう一本同じ物を作って両手に持った方がいいのか。
 試行錯誤するカオルを、月だけが見ていた。

カオル好きに10のお題トップへ