1クリック劇場3 #10「光」

 あいつを殺した俺が光の中に出ていいはずがない。
 頑なに抱いていたその思いは、ある少女との出会いと、未知の惑星で体験した様々な出来事とによって打ち砕かれた。
 そして彼は、もう一度、自らの人生と向き合う決意を固めてコロニーに帰還した。
 ……のだったが。


「ハワード、一体どういうことなの?」
「僕の無人惑星冒険生活の再現映像を撮りたいって言うからさ、まあ一応お前達も呼んでやったんだよ。ああ、エキストラとしてちゃんと出演料が貰えるように、僕が交渉もしてやったからな。ありがたく思えよ」
「ハワード! 一体なんだ、この衣装は。こんな格好で人前に出ろというのか?」
「メノリ、いいか? 知らないなら教えといてやるけど、『本物より本物っぽい方がウケる』んだぜ」
「勝手なことを言うな。あの星の不自由な生活で、品位を保つために私がどれだけ苦労したと思っているんだ」
「まあまあ。メノリもそんなに堅苦しく考えることないんじゃないかな。……確かにちょっとボロボロの服だけど」
「一種の記念写真みたい思っとったらええやないか。シンゴ、さっきから何背負ってんねん」
「うん、背景は後から合成するけど、それだけじゃ間が持たないから、コレ持っててくれって、局の人が」
「なんだあ? 気持ち悪い生き物だな。こ、こっち来んなよ」
「こりゃウーパールーパーっちゅー生き物やな」
「ウーパールーパー? へえー、結構可愛いじゃない」
「そうか? 気味が悪いが……って、そんな話をしている場合じゃない! もういい、お前達では話にならん。カオル、お前はどうなんだ」
「……俺に話しかけるな」


 ロカA2に帰って間もなく。
 放課後、ハワードに集合をかけられたかと思えば、まとめて大型エアカーに放り込まれ、着いた先は大手TV局。ろくな説明もないまま、男女別にメイク室に連れ込まれ、どこかで見たような衣服に着替えされられ、有無を言わせずフェイスペイントまで施され。
 額に汗が浮かぶほどの光の氾濫の真っ直中で、何故か持たされた弓を握りしめつつ、とにかく一刻も早く収録が終わればいいと願うカオルであった。
 (ちなみにその映像はネットワークに乗って全宇宙に配信された)

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