鯖の佃煮

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#52 「みんなのところへ」(最終回)

 「じゃ、行くよ。お前はみんなのところへ帰るんだ」――ルナ父

 特攻、爆散、再会、帰還、そして……、の巻。

 いつもの「宇宙開発が盛んな時代……」はカットで。

 予想以上にエネルギーを増大させていた重力嵐の影響で宇宙船の一部が爆発、重力制御ユニットの切り離しが不可能になるという事態にみまわれたサヴァイヴメンツ。
 一人で重力嵐に突っ込むと宣言するカオル、そんなカオルに本気で怒鳴るハワード、代わりに自分が行くと言うベル。そしてシャアラの言葉を皮切りに、みんなで行こう、という流れに。
 カオルが反論しかけるも「どれだけの時をみんなで過ごしてきたと思っているんだ。苦しい時も悲しい時も、ここにいる全員で乗り越えてきただろう。仲間が欠ける痛みは耐え難い苦しみだ。だから……、二度とそんな思いはゴメンだ。一人で行くなんて絶対に認める訳にはいかない」というメノリの台詞にはさすがに返す言葉もなく。
 「ベルに操縦は無理だ」だの「無駄だ、お前が何を言おうと全員の気持ちは変わらない」だの、何気にキツい物言いなカオルとメノリ。一刻の猶予も許されない状況に久々に飾りのない本音トークですがここはメノリに軍配が上がったようです。メノリはいいリーダーになったなあ。これぞ本当に血の通った言葉という気がします。この二人の絡みももっと見てみたかったですねえ。現実主義者同士のシビアな会話とか。意外とどちらも頑固者なので正面切って対立したらさぞかし盛大な火花が散ったでしょうに。
 しかし、今まで必死に生き延びる方法を模索してきた彼らが、仲間を失うくらいなら死をも辞さないという覚悟を固めたというそのことが、事態が最終局面を迎えていることを教えてくれます。
 カオルが単独行を断念したようなのを見てメノリがこっそり安堵したのもつかの間、激しい衝撃が。
 スピーカーから「みんな座席について。シートベルトを締めて」というルナの声が響いたかと思うと、皆の体が座席に固定されます。コックピットでのやりとりを見ていたルナは、自分とメインコンピュータ・サヴァイヴだけで重力嵐に向かおうと決意していたのでした。今や一心同体となったサヴァイヴにその旨確認すると、この星の守護機械神にも否やはありません。前回と随分態度が違うさばいボン、女神さまにケツを叩かれ、ようやく己の身に代えても星を守ろうという気になったようです。
 「みんな、ごめんなさい。ここからは私とサヴァイヴだけで行く」と告げるルナ。容赦なく避難シャトル切り離しのカウントダウンを始めます。ルナの意図を悟って叫ぶカオル。そして本体の宇宙船から射出されるシャトル。
 ……なんかこの有無を言わせぬカウントダウン、辛いことは早く済ませてしまいたいルナの心境を表したもの、ととるのが正しいのかもしれませんが、親がぐずる子供に上から言うことを聞かせようとしているように見えてしまいました。
 うーん、それを出来る人が出来ることをやろうとするのと自己犠牲は違うと思うんですが。何のためにメノリが血を吐くような演説をぶったのか、何でそれでカオルが引き下がったのか。仲間が欠ける痛みを思えばこそだろうに。カオルを引き止めるあの場面もルナは仕方ないこととはいえ場外だったし、結局ルナはみんなのチームワークの中に入ってなかったのかなあ。もっともそこまで一つの絆で結ばれている皆を見たからこそ、ルナの腹も決まったのかもしれませんが。でもやはりあそこは一緒に行こうという皆の意をくんでほしかった。自分に重きを置きすぎるのも自意識過剰でイヤンですが、自分の存在を軽く見すぎるのもまた仲間に対して失礼なのではないかと思いますよ、ルナたん。
 ただ、ルナが単独特攻に踏み切ったのは、自分がサヴァイヴと一体化しているということが大きな要因となっているはずなので、前回シャアラとメノリが現在のルナの状況を尋ねているところで切れていたことでもあるし、ルナがサヴァイヴと一体化していることを皆に明かし「私はもう人に戻れないかもしれないから……」と、だから自分が行く、という展開も有りかと思いましたが、そこまで悲劇性を高めるようなことにはならなかったですな。
 サヴァイヴがルナを取り込んでルナの能力の根源を知ったように、ルナもサヴァイヴが今まで蓄積してきたデータを体感したのでしょうか。ルナが知り得た世界とはどんなものだったのでしょう。

 仲間ひとりずつと言葉を交わし、そして、ゆっくりと重力嵐に近づいてゆく宇宙船。泣きながら、或いは涙を堪えながら見送る一同。やはり女子ズの涙は綺麗ですな。メノリの激情を押さえきれない表情は美しいし、元祖ルナ信者シャアラの滂沱たるさまも百合っぽくてまたよし。チャコは妙に乙女顔になっていた気が。
 サヴァイヴが重力場の変化を解析し重力制御ユニットを出力全開で作動させますが、重力嵐の威力が強すぎて変動に対応し切れません。火花を散らしはじめる回路、それでも退かないルナ。サヴァイヴの泣き言を再三退け、「このままでは宇宙船が崩壊する」と警告されてもまったく怯む気配すらありません。むしろ「忘れたの、最後まで生き抜くのよ」とあくまで徹底抗戦の構えで。
 唸り声と共にルナから発せられる金色の光はやがて宇宙船をも包み込み、しかし固唾を呑んで見守る皆には非常に危うい状態に見えます。
 限界値を越えても力を上げ続けるルナ。
 「負けない、たとえこの体が塵となっても」
 嗚呼ルナの“倒れる時は前のめり”人生、ここに極まれり。
 ルナの言う「生き抜く」とは「耐えて生き延びる」ではないんですね。明らかに、カオルが叫んだ「生きるんだ」とは方向性が違います。同じ「諦めない」という意味あいを含んでいても、カオルたんのはルナに生きていてほしいという願いですが、ルナのは何というか、最後まで初志貫徹を目指す……というか、たとえ目の前に壁があろうともそこにゴールがあるなら全力疾走でブチ当たるのも厭わない、むしろ激突上等な勢いで突撃せよ。そんな感じ。悔いを残さない生き方といえば聞こえはいいですが、自己完結しているニオイがなきにしもあらず。
 そして、ルナは力の限りを放出し、宇宙船――爆散。

 重力嵐消滅には至らずとも軌道は惑星から逸れた、作戦は成功――との報がタコから入りますが、目前の信じがたい光景に打ちひしがれる皆はそれどころではありません。
 その頃ルナは、あの世とこの世の境目で死んだはずの父親と再会していました。
 ずっと会いたかった懐かしい面影。泣きながら父の胸に飛び込んだルナは、父親に「よく頑張ったな」と言われ、自分の中に隠していた本当の姿に気づきます。それは、父の言葉に応えるため、無理をして頑張り続けていた泣き虫な小さな子供。
 いま思えば、「生きろ」という言葉に関して少なくとも#23時点ではそんなに思い詰めた様子はなかったのに、終盤ルナが異様な目的意識に凝り固まっていったのは、アダムの両親謹製ナノマシンの相乗効果もあったかもしれませんが、恐らく話が次第に父の職域に近づいていったからなのでしょう。#38で神々しいほどの自然の美しさを見た時から、変なスイッチが入っていたのかもしれません。ルナがメインコンピュータ・サヴァイヴについて、人類を抹殺してきた事実より星の環境を守ってきたという面を重視するのもきっとそのせいでしょう。内的要因に突き動かされて進むルナ。それを知らずルナの内面に積極的に皆が絡まないまま展開されてきたこの最終クールは、そういう意味では、少年少女7人の物語というより、ルナだけの物語だったんだな、という気がします。
 でも無理に無理を重ねてその命さえ散らすことになっても、最後に父親に褒めてもらえたのだからルナ的には満足なのでしょうね、多分。娘の無茶が心配なら、たまには夢枕にでも立ってやってくださいよ、お父さん。お宅の娘さんの無茶はケタが外れてますんでねえ。

 ルナ以外のサヴァイヴメンツは、この星での体験で自分の短所を克服していったり過去を乗り越えていったりと大いに成長を遂げたのに、皆を変えていったルナ自身は変わらなかった。本人の意識しないところで、ずっと父の末期の言葉に呪縛されたままだった。それは、コミックス版2巻巻末掲載の制作スタッフインタビュー内の「ルナはちょっと無理しているところがあって最後にやっと普通にもどれるんです」からも明らかですが、うーん、それってどうなんですかねえ。制作側では、みんなを引っ張ってきた明るいルナも本当は無理してたんだよー、素で優等生やってた訳じゃないんだよーというオチ(というか、ちょっとしたどんでん返し)にしたかったんですかね。でもって実際、最終話にきてルナたん、積もり積もった無理を父の一言で癒されてしまいました。結局、ルナに限っては最後まで経験が過去を上回ることはなかった、ってことになってしまうんですかねえ? じゃあ、ルナにとって、この星での体験って何だったんだろう、仲間ってどういう存在だったんだろう、と考え出すと結構鬱な気持ちになってしまうのですが。
 #38で一人無人島に漂着した時も、ルナは「お父さんに褒めてもらいたくて」的なことを呟いていたと思うので、あのあたりが一つの分岐点だったんですかね。出来ることなら仲間と同じように作中でルナに変わってもらいたかったなあ、と思います。仲間とのぶつかり合いの中で過去を乗り越え、新しい自分を構築し直してほしかった。まーねー、それでルナが「超前向きでナノマシン持ち、だけど基本的にフツーの女の子」になってしまったら、さばいボンを乗っ取って超絶パワーを発揮することもなく、仲良くみんなで重力制御ユニットごと重力嵐に突っ込んで自爆エンド、なんつー身も蓋もない最終回になってたって気もしますがねー。ははは。
 だから「無理をしていた自分に気づくルナ」をラストまで取っておかなくてはならなかったのだとしても、だったらせめてルナと仲間との直接の再会シーン、仲間に受け止められるルナという場面ぐらいは描いてくれてもいいんじゃないかと思うんですが。(そういえば#38でも再会場面は描かれないままでしたな) でないとルナがどう普通に戻ったか判らんじゃないですか。むーん。ていうか、誰かルナを叱れ。怒れ。

 さて、父親に優しく突き放され(基本的にやっぱり「生きろ」なオヤジなのよな、この人は)、次にルナが気づくとそこは傍らにサヴァイヴの青い光が浮かんでいるだけの宇宙空間でした。
 「あなたがお父さんに会わせてくれたの?」とサヴァイヴに問うルナ。
 しかしサヴァイヴは言います。
 「お前の心がそうさせたのだ。ナノマシンとお前の持つ不思議な力が一つになった時、その力が新たな世界を創りだしたのかもしれない」
 常識を覆すルナのガッツとミラクルパワーを目の当たりにして、サヴァイヴは考えを改めたようです。一瞬、ルナが爆散の直前に発した光と同じ輝きを浮かべてみせたのは、データを超越するルナの力を思い出してでもいたのでしょうか。
 「星の未来はお前達人間に託す。機械と人間が力を合わせ、自然との新しい調和を生み出してくれ」
 そして飛び散る青い輝き。サヴァイヴ大往生。
 ルナが気づくまでエネルギーを保って待っていてくれたんですね。ナノマシンシールドとやらでルナの体を守ってくれてもいたようだし。でもやっぱりルナを人間の基準にするのは間違っていると思いますですよ、さばいボン。

 一方、沈痛な雰囲気が漂うシャトル内。誰も口を開く者はいません。
 と、何かを捉えて広がるスクリーン。それに気づいたチャコが慌ててズーム拡大、拡大、するとそこに映し出されたのは、ルナ。
 あれって、ルナがナノマシンパワーで通信回線にでも干渉して操作したんですかね? ばっちり視線寄越してたし。どうせなら微笑むだけでなくいっそ手も振ってくれよ、と思ってしまいましたよ。
 ルナが引き起こす超常現象をすべて受け入れているサヴァイヴメンツですから、ルナが生身の体で真空空間を漂っていることなぞ恐るに足らず。素直にその生還に大喜びです。宇宙飛行士候補生のカオルぐらいは疑問を感じてもいいはずですが、こっちはこっちでマジにベソかく1秒前みたいな顔でえらいことになってますしねえ。無理しないで泣けばいいのにー。あの場面なら泣いたって誰も何も言わないだろうし。カオルたん、最終回になってえらい百面相を見せてくれます。(落涙を堪えるメノリのだだっ子みたいな表情も可愛かったですが)
 そんな時、彼方からルナとシャトルを照らし出すまばゆい光が。見やれば、サヴァイヴと同型の宇宙船の大群。そうです、千年前に宇宙に脱出していたアダムの仲間のお帰りです。

 ここから先は急転直下、絶妙のタイミングで帰ってきたこの星の住人から宇宙船を譲り受け、それでもって重力嵐にダイブしコロニーに帰ろうとするサヴァイヴメンツ。暗転明けはもう別れの場面です。
 ……って、はえーよッ。しかも、「コロニーに帰れるって保証は何もないんだよ」とか言われてんのに、「だが可能性はある」「試してみる価値は十分ある」とニコニコしながら無謀な賭けに打って出ようとしてるし。ビミョーに#50と同じ気配を感じるのですが。皆さん、立て続けに重要な決断を迫られて、ネジが飛んでしまわれましたか? それともアダムの台詞は心配するあまりってコトで、本当はもうちょっと勝率の高い賭けだったりするのかなあ。千年も宇宙を放浪していた民族ならそれなりに高い技術とか詳しい星図とか持ってるだろうし。少なくとも食糧は船内で自給自足できるシステムが整っているハズ。でも何であの宇宙船だけ、他のと形が違うんでしょ。
 しかし、何よりその消滅を願っていたはずの重力嵐が今度は希望への扉となるとは何たる皮肉よ。

 アダムに別れを告げるサヴァイヴメンツ。ルナの「もしコロニーに帰れたら、この星での経験を生かすつもりよ」という言葉に繋げて「人間の犯した過ちも含めてな」とおっしゃるカオルさん。あーた「共存なんざ綺麗事だ(大意)」とかぬかしてた人が、いつの間に宗旨変えしましたかね。
 両親の遺志を受け継ぎ、皆でこの星を守っていく、と健気に決意を語るアダム。タコと帰還船団のおエライさん達もそれに同意してくれます。
 ……偉いサンは、なんかもーちょっともったいぶったお言葉があるのかと思いましたが。というか、そもそも今の会話判ってんでしょーか。タコの通訳? そして首長レベルの相手に、対等に頷き返すサヴァイヴメンツもなかなかすげーと思いました。もしかして素朴なボディランゲージで交流してたんだろか。
 にしても、もう二度と会えないかもしれないのに、アダムに対する態度が淡白すぎやしませんか、ルナたんよ。微妙に涙ぐんではいた感じだったけど、仲間と一緒に突っ立ったままだし。愛用のヴァイオリンを手渡し「いつの日かお互いの星と星を繋ぐ架け橋となろう」とアダムに語りかけるメノリや、涙を浮かべながら別れの挨拶を交わすチャコ・タココンビの方がよほど別れが辛そうに見えるんですが。一体今までのベタつきぶりは何だったんだ。アダムはアダムで、どうしてもコロニーに帰るんだいとだだをこねるサヴァイヴメンツに、仕方ないなあ……という素振りでため息をついてみせたりと、いきなり年齢が上がった印象があるし。あっという間に子離れ親離れしましたか。それとも、コロニー帰還が叶うかもしれないことと仲間が帰ってきたことで、二人とも憑き物が落ちてしまったのか……。「その人物と共にこの星で逞しく生きてくれ」という、そっちの方の両親の願いは何処へ。まあ、自分の相手くらい自分で探せるよな。なあ、アダム?

 何はともあれ「さあみんな、出発だ!」
 ハワードのかけ声と共にいざ宇宙へ。
 アダムスーツタイプの愉快な宇宙服に身を包み、感慨深げに次第に遠ざかってゆく星を眺めるサヴァイヴメンツ。皆に促されシャアラがつけた名前、それは「惑星サヴァイヴ」。同名のコンピュータとの経緯を考えると首を傾げてしまう命名ですが、アダムの仲間を殺しまくってたりーとか、自分達も何度も殺されかけたりーとか、操られたりーとか、そういうことはルナ(と星)を助けてくれたことでチャラなのか。初めに漂着した島には名前をつけんでいいのか。相変わらずさばいボンに感情移入過多なルナは一層、感無量な面もちですが。(まーそれはそれとして星の名前は仲間内の通称にとどめておく方がいいとは思う)
 しかし今は過去を振り返るべき時ではありません。
 皆で手を繋ぎ、重力嵐へと突入する宇宙船。
 そして――

 数年後。
 受信したメールを開くと、そこには、カオル・ベル・シャアラ・シンゴ・メノリ・ハワード……と仲間の成長した姿が。
 サヴァイヴメンツは無事にコロニーに帰り着いただけでなく、それぞれに新しい人生を歩み始めていたのでした。無論、仲間だけでなく、ルナもまた。
 ナノマシンを用いた地球環境再生の試みは確実に成果を上げつつあります。そのことを胸の内で父に報告し、新たな一日を過ごすためにチャコと共に駆け出すルナ。
 頭上では木の形を象ったかのようなテラフォーミングマシンから盛んにナノマシンが噴出されています。サヴァイヴと交わした約束、あの星での思い出を示す、きっとこれも一つの形。

 ――という訳で、ラストシーンを迎えた「無人惑星サヴァイヴ」。
 いや正直、ここまでコロニー帰還に至る経緯を省略するとは思ってもみなかったですよ。ま、まあ地球人類の版図に辿り着くまで真っ当に描いてたら、もしかしたらもう一年必要そうですしねー。
 しかし重力嵐突入アゲインの手繋ぎシーン、はじめ見た時、念力式宇宙船なのかと思ってしまいました……。
 操縦席のカオルは別としても、シンゴもチャコも機器にはノータッチで、最新式の重力制御ユニットはスイッチポンの全自動式なんでしょうかね。なんたら粒子で重力場を精密に制御できる、ってのは重力嵐を無事に通過するのには有効そうですが、通過後どこの空間に飛び出すかってのまでカバーできるんでしょうか。それともやはり、行き先の選択は念力で……?
 思ってもみなかったといえば、重力嵐の軌道が逸れるってのも、ものすごい盲点でした。消滅させるか飲み込まれるかどっちかしか考えてなかったので、タコの報告を聞いて、そうきたかポン、と膝を叩いたものです。簡単には手なずけられない自然の脅威とそれに挑戦する人間の可能性、その両方を描くのに、軌道が逸れるというのは上手い折衷案だったんじゃないかと思います。
 また、物語の初めにとんでもない世界に放り出してくれた重力嵐に、物語の最後では可能性を信じて自らの意志でもって飛び込むというのも(下手すりゃただの自殺行為ですがね)、ベタですが判りやすい演出じゃないかと。

 ですがねえ、何と言っても最終回最大の見所はルナが受信した映像付きメールですよ。
 あまりのルナティックパワーと話の端折り方に唖然呆然としていた頭が、アレですべて持っていかれましたわ。

 大人カオルたん。
 短くした髪も涼やかな笑顔も萌え!なのですが、無造作に首に引っかけたインカムがねー、本当にパイロット業がカオルにとって日常なんだなーって感じで良かったですわあ。しかも「今度は火星行きのシャトルのパイロットだ」って、もう新人クラスじゃなさそーじゃないですか。後輩とかできたのかなー。先輩はともかく、あれの上司は大変そうだ。ただ、どの程度の規模のところに就職したかは判りませんが(コヤツの場合、軍か民間か、まずそこから確認するべきか)、カオルが組織の中にいるっつーのが、納得できないというか釈然としないというか想像できないというか。オトナになったのねえ……。
 そしてパイロットとしては致命的な「ヤツが乗る船は災難に遭う」というジンクスは果たして解消されたのか。未だに「カオルか。あいつは腕はいいんだがな……」と微妙に語尾を濁されちゃったりしてるのか。
 「え、何か本人に問題が?」
 「いや、それは問題ない。ただな、何というかだな、あいつが乗るシャトルはやたらとトラブルが多いんだ。まあ初めにも言ったが、腕はいい。トラブッても大抵のことはクリアして帰ってこれるから、安心して乗ってくれ」
 「そんなあ……」
 などと妄想は果てしがなく。

 惑星アルビオンで開拓事業に励むベル。
 職業としては惑星開拓技師ってことでいいのかな。ルナとは分野が違ってそうですが。
 体は一段と逞しくなったものの、変わってないなあ、ベル。その変わらなさがきっと君の偉大さ。でもたまには冒険してみるのも……いや、やっぱりいいです。すみません。
 で、ベル君、ルナ狙いも相変わらずですか。
 「近いうちにそちらに顔を出せるかもしれない」なカオルと「次の任地は地球を希望している」なベル。境遇はカオル似で、生き方はベル似なルナは、奇しくもその両方から想いを寄せられている訳ですが、どーなっちゃうんでしょーねー、このトライアングル。ルナは仕事に忙しくて恋愛ごとは当分後回しだろうし。勝手な想像としては、ベルは結局他の惑星で出会った女性と結婚、ルナとカオルは途中いろいろあったりなかったりして出会ってから実に20年後ぐらいにようやく結婚、もしくはどちらも生涯独身かなー、とか思ってますが。

 いきいきと、惑星での冒険談を書き上げたと告げるシャアラ。
 あらあら、すっかりあか抜けた美人さんになっちゃってー。でもドジっ娘風味は残しているようなのがたまりません。シャアラはどうなんだろう。普通にお勤め? それとも小説家? どちらにしろ書くこと自体は続けていた様子。いっぺん大人シャアラの書く物語も読んでみたいものですが。サヴァイヴに操られていた時のことを考えると、案外ホラーな展開が待っていたりして。

 タイタンからの映像を送ってきたシンゴは家を出ているのでしょうか。
 眼鏡萌えなのに、シンゴにはクるものがあんまりないなあ……とか思ってたら、おまっ、こんな大ラスで……ッ。何で最初からその顔で出てこないの。(無茶を言うな) せめて眼鏡のフレームだけでも取り替えてくれッ、と声にならない叫びを上げてしまいましたよ。とほほ。
 ポルト爺さんの後を歩もうとしているシンゴ。何だかんだで宇宙関連の仕事に就くキャラが多いですな。

 未来の連邦議員を目指し、父のもとで秘書として修行中のメノリ。
 ビューチホーだよメノリん。早く連邦議員になりたいとは、さすが言うことが違います。しかしそれは現職議員の父親には聞き捨てならない台詞のような気が。だって、早く引退して私に議席を譲れ、と言っているも同然じゃーん。
 「惑星サヴァイヴとの交流を確立させたいものだ」とは、あの星とはまったく糸が切れてしまった訳ではなくて、非公式に細々と何かやりとりがあったりするんでしょうか。それにしても環境が環境とはいえ、ものすごい現実的な方策を取りましたな。写真なんぞも飾ってるし、そんなにアダムラブだったなんて知らなかったよ、メノリん……。

 ある意味、こちらも変わっていないオチ担当のハワード。(アンタ、何でそんなに華奢なのよ)
 真っ赤なシャツにサングラス。胸元のその趣味の悪い物は何すか。ハワードブランドなんつって、ファンのコのマストアイテムだったりするのかなー。……い、嫌じゃー。
 宇宙一のアクターにおなりあそばしたそうですが、やはりあの迷作「お花の園の妖精」で演技に目覚めたんでしょうかねえ……。どんな路線で売ってるんだろう。あんまりアイドルノリだと年喰ってからの路線変更が大変だぞーって、後ろに飾られた数々のトロフィーを見る限り、そんなことは余計なお世話か。まさかハワパパが親馬鹿のあまり、新しい演劇賞を創設したりなんかしてないですよね、よね?

 そしてルナ。
 いくら進んだ技術とはいえ、ナノマシンによる環境制御は他の文明の産物であり、その方式を導入するかどうか決定するだけでかなりの紆余曲折を強いられたはず。それが実地に移され結果も上々ってことで、ハワードの出演作を観る暇がないほど(本当は素のハワードを思い出して笑っちゃうから観ないんだと思うけど)仕事漬けでもきっと毎日が楽しいんだろうな。相変わらず「頑張るぞー」な彼女だけれど、以前のような無茶はもうしないはず。とにかく、明るい笑顔が見られて何よりです。でも欲を言うならもっと私服のシーンが見たかったよー。

 なんかもー、前途洋々とした皆の笑顔が眩しくて眩しくて。気分は就職祝いのお返しを貰った親戚のオバチャンですよ。まあ、あんなにちっちゃかったなんとかちゃんもこんなに大きくなっちゃってー。
 あと、通常エンディングに差し替えて1カットずつ映し出された、両親との再会シーン。あれってどういう状況なんだ、帰還直後なら検疫もあるだろうし病院直行じゃないのか、せめてあのステキスーツは着替えさせてやれよ、とかいろいろ思いましたが、こちらもなかなか感動的な情景で。それなのにまたしても笑いをとるハワード。エライよ。んで、やっぱりカオルと一緒にいたのは、少なくとも男性は実の親ではないと思います。

 遂に最終回を迎えてしまった「無人惑星サヴァイヴ」。
 やはりこの作品の魅力は素敵なキャラクター達にあったと思います。終盤、その魅力を活かしきれずやや失速した感があるのが非常に残念ですが、しかし最後までびっくりするような展開、加えて〆は前向きな大団円で、後味のよいラストはとても心地よいものでした。
 毎週の楽しみをありがとう。
 終わっちまって淋しいよっ。

 
最終更新: 2004/11/07
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