「あーあ、早く出発しよーぜ」
ハワードは頭の後ろで腕を組み、仲間が親切にも発着ポートの中で探し物をしてやっているのを呆れ顔で眺めていた。イカれたロボットのネジ探しなんて、馬鹿馬鹿しくてとてもやる気が起こらない。
「ハワード」
呼ばれて振り返ると、いつの間にかカオルがそばに立っていた。
「撃ってみろ」
唐突に差し出された物を見て、ハワードは目を見張った。それは青い光線銃だった。
「いいのか?」
「出力は抑えてある」
「ふーん……。じゃあ、ひとつ僕の腕前を見せてやることにするよ」
相手の意図が読めないのがやや気にくわないが、まあいいかとハワードは丸いフォルムの銃を受け取った。
カオルが指さす方向に照準を合わせ、呼吸を整えてからためらうことなく引き金を引く。発射音がして着弾点に火花が散った。
――それはカオルが指示したポイントから大きく外れた場所だった。
「あ、あれ?」
予定では壁に刻まれた紋様の一つを華麗に撃ち抜くはずだったハワードは、自分を見ているカオルに気づいて、顔を赤くした。
「何だよ、おかしかったら笑えばいいだろう!」
押しつけるようにして相手に光線銃を突き返し、ふん、とそっぽを向く。
だが。
聞こえてきたのは、ハワードが予想だにしなかった言葉だった。
「おかえり、ハワード」
「はあ?」
面食らったハワードが見返した時、既にカオルの姿はそこにはなかった。ハワードの傍らを通り過ぎ、真っ直ぐにルナ達の方に歩いてゆく。
「おい、ちょっと待てよ! それどーいう意味なんだよ」
ハワードはカオルを追いかけようとし、何かに足を滑らせて思い切り尻餅をついた。
「いってぇ……。なんだよコレ」
金色に輝く、それはタコのネジだった。