鯖の佃煮

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#43 「一緒にコロニーに帰るんだ」

 「駄目だ、一緒にコロニーに帰るんだ」――ハワード

 ハワードッ、ハワード!?、ハワード〜っ!!の巻。

 メインコンピュータを目指し、砂漠を横断中のオリオン号。しかし砂塵に巻かれて機器は不調、船を止めて修理するはめに。めずらしくメカ担当のシンチャコと一緒に機関室に降りたハワード、砂まみれになって不機嫌に御髪を整えていたりしましたが(まだ櫛持ってたんか。というより初めて使ってるの見たような気が)、「砂漠を越えるまで機械がもてばいいんだけど」というシンゴの言葉に思い切り噛みつきます。ここでシンゴからハワードを引き剥がしたのはカオルでした。個人主義で、口を開いたと思えば「相変わらずよく吠える犬だ」とか言ってた人が。変われば変わるもんですねえ。
 プロジェクター状態のチャコの見立てによると、目的地到着まではまだ日にちがかかるとのこと。今回はあれだ、事前に「砂漠を甘く見るな、痛い目を見るぞ」と言ってくれる人はいなかったのか?ということに尽きるようですね。どうにも準備が甘かったようです。なまじ今まで何とかやって来られただけに、あまり装備の点検もせずにそのまま行ってしまったんでしょうか。

 一方、食事の準備をするシャアラとアダム。自分の担当だけに食糧状況の厳しさが判るシャアラはこっそり自分の分を削ってしまいます。それだけでなく沈みがちな食事の場を和ませようと、途中で拾った“砂漠の花”を見せて何とか楽しい話題を提供しようとするのですが――ハワードには通じず、むしろ彼からよりヒステリックな反応を引き出してしまうことに。確かにいろいろと不安要素を抱えた中で“お花畑”がどうこう……というのは正直話題的にどうかと思わないでもないですけど(女子チームだけならともかく)、それにしてもハワード君、心の容量小さすぎ。秘密を黙っていられないアダム並です。先程シンゴに詰め寄った時も、メカニックの責任を問うというより安心を保証を欲しがっているという風で、ハワード的には、不安を分かち合うか、絶対的に安心させてほしかったのかもしれませんが、このネガティブ思考のまき散らしっぷりは皮肉にも遭難直後のシャアラの言動を思い起こさせますねー。ついには、見かねたルナに滔々とシャアラの心遣いを説かれ、みんな不安だと、それでも今は乗り切れるって信じて進むしかない、と甘えを叱りとばされてしまいます。

 ルナが怒鳴ったあたりで、男子チームのうち比較的オトナ組のカオルとベルが操縦席からハワードを咎めるように振り返るのですが、癇癪を起こして和を乱しているハワードを非難するというより、「あーあ、女子チームを怒らせやがってこの馬鹿、後は知らねーぞ」とでも言いたげな感じが微妙におかしかったです。
 ……ってあれ?遁走ハワードに対するメノリの反応は? (今回メノリの影が薄いような気が……。来週回し?)

 いたたまれなくなってみんなの前から逃げ出したハワードですが、狭い船内に逃げ場なし。シャアラに追いつめられてしまいます(嘘)
 責めた相手に謝られ慰められ、更にルナとシャアラとの会話でシャアラが食事を控えていたことを知り、ますます立つ瀬がなくなってしまうハワード。どうするお坊ちゃん。
 それはともかく、シャアラの身体を心配するルナに笑顔で応えるシャアラは凄く成長したと思います。それどころか最早慈母オーラすら漂うような風格です。#40で干物の魚をバリバリ食べる彼女を見た時は、オイオイどっちの方向に進んでくんだよ、と心配になったりしましたが、まったくの杞憂だったようです。きちんと自分の考えを持って行動できるシャアラは、もうみんなのお荷物なんかじゃ全然ありません。

 さて、オリオン号はあろうことか砂嵐に遭遇してしまい、ついに重力制御ユニットが不調を通り越して停止寸前に。やっぱり相当扱いが難しいブツなんですかね、これ。が、掃除機で砂を吸い取るシンゴ……ってそんな対応で大丈夫なんかー? ああ?
 そして、長い砂嵐を抜けると崖っぷちであった……って、あんなに叫ぶとは思いませんでしたよ、カオルたん。高低差ダメですか? 空中のドローンから飛び降りたりしたくせに。そりゃ確かに視界が開けた途端(しかも一番視界の効くところで)、宙に放り出されたらびっくりするだろうけどさあ。あまりのビビリ顔につい笑ってしまったではないですか。しかし、根性の操艦であわや砂山に衝突か?という危機を回避したのはさすがです。
 様子を見に外に出るカオルとハワード。どうやら操縦桿と一緒にチームの主導権も握ることにしたらしいカオルと、とにかく状況を自分の目で見たい……が、対策を考えることなどまるで頭にないようなハワードが対称的です。不安のあまり、もうどこにでも頭突っ込んできますね、ハワード。

 そーしーてー、一難去ってまた一難。というか、もう難だらけですが、船が停止したのは流砂の巣のど真ん中だったのでした。……あー、腕はいいんですがねえ、運がないんでしょうねえ……。ええ、誰がとは言いませんけど。
 そんなカオルの指揮のもと流砂からの脱出行がはじまる訳ですが。
 「飛び降りるぞ」ってのも相当に無理な話ですが、それしか手段がないのならそれもやむなしとて、先行したベルが大丈夫だからって一斉にGO!ってあーた。ベルを安全の基準にするのはかなーり無理があると思うんですが。それにおまいさんの肩に掛かっているのは一体何なのよ、と>カオルたん 折角ロープがあるんだから、アダムやチャコ、シャアラのような体力弱者はロープを使って少しでも安全に渡らせてやるとか考えんのか。
 そもそもいかなベルとはいえ、船をも押し流す勢いで足下を砂が走っているのに、随分楽勝で向こう側に渡っちゃってるのが何だかなーと。ここは砂に足を取られてこけつまろびつというのがお約束ではないのですか。
 シャアラが船に取り残されたのが判った時もみんなで叫んでるだけだし。前回までの電光石火のスーパープレイはどうしちゃったのさー、カオルくん、ベルくん?
 なんつーか、このあたり、台詞の上では急いでいるんだけど動きがあまり焦っていなくて、いまひとつテンポが悪いなーと思ってしまいました。
 向こう側でベルがロープを持って、皆が順番に渡り始めたところで、船が一層揺れだし「仕方ない、みんな一斉に飛び降りるんだ!」、で、シャアラが取り残されちゃった、助けに行こうとするベル・カオルの先手を切って横切る影、メノリ「何をするんだ、ハワード!」、回想と共に船に取り付くハワード――なーんて所詮は妄想ですが、見てるこっちが慌てるくらいガンガン早回しで進めて良かったような気がします。

 あと、オリオン号を見捨てることに、シンゴがあまり渋らなかったのが意外だったかも。もっと口論めいたやりとりが展開されるかと思っていたので。他のみんなも決断早かったですね。状況が状況だけに迷う余地すらなかったのかもしれませんが、オリオン号を失ってしまえば移動手段も休む場所も何もない状態にまた逆戻りしてしまう訳で、危ないからといってはいそうですか、とはなかなか決断しがたいものがあるんじゃないかと思うんですが。メインコンピュータまで辿り着ければ何とかなるかもしれない、という考えがあったのかな。

 ――でも、そんなことはどうでもよくなるような展開がこの後待ちかまえていたのでした。

 眼鏡を落としてしまい船から飛び降りるタイミングを失って、一人取り残されてしまったシャアラ。必死に助けようとするハワード。ここ一番の見せ場に、作画も最高レベルで盛り上げます。華奢なシャアラの手と、それを掴むハワードの手の大きさの対比に萌え。(萌えとか言うな)
 ロープを腰に巻いたベルが現場に到着しますが、ぎりぎりのところで手が届かない。指先が触れそうで触れないのが、やり切れないほどもどかしい。ここだけでうっかり恋に落ちてしまいそうな切ないシチュエーションです(小声)。
 ベルの機転で、ハワードの上着をロープ代わりに二人を引っ張り上げようと試みるものの(ベルの馬鹿力にもびっくりですが、二人分の体重を預けてもびくともしないとは、やはり未来の繊維は一味違いますな)、しかし、もう少しでベルの手がハワードに届くというところで、急激に船が傾きシャアラ落下。とっさに後を追って滑り降りるハワード。そして本日ハワードの手を掴み損ねること通算2回目のベルさん。(トラウマになりそうだ……)
 シャアラを抱きかかえたまま細腕一本で船にぶら下がり、あまつさえ彼女を安心させるように明るい口調で「大丈夫だ。登るぞ」と言うハワードは、さっきまで不安に押しつぶされそうになっていたボクちゃんとはまるで別人です。なんて頼もしい。思うにハワードは瞬発力はあるんですよね、以前から。問題は持久力で。でも今はそんなことはどーでもいい。 見栄もハッタリもなく本当に本心からシャアラを励ますハワード。最高です。あんた男だよ。シャアラもホントにいい子だ。
 ここでズバリいうとハワードとシャアラはお年頃の少年少女にあるまじき身体の密着を見せている訳ですが、何というかですね、ラブラブとかフラグ発生とか、そんな感じには私には見えなかったんですよね。確かに男の子と女の子なんだけど、兄妹みたいな、ものすごーく純粋な子供同士に思えたのは、あまりに素直なシャアラの「うん」のせいでしょうか。
 ともかくもあの二人のシーンに“みんなでコロニーに帰るんだ”というこの話の原点を見たような気がします。それだけに砂に沈みゆくハワードの手は大層なショッキング映像でしたよー。うわーん。

 でも、ソーラーパネルに弾かれてビョンと飛んでしまうベルにはやっぱり笑ってしまった……。許されてー。
 だけどあれ、ルナ達ロープ組がみんなで引っ張り上げなきゃ、ベルも砂に飲まれてかなりヤバイ状態になったんじゃないのかなあ……。そこんとこ、もっとシビアに描いていいと思うんですが。砂の上に落ちたハワードの上着も流されないし……。

 次回は、仲間と船を失って皆が意気消沈する中、メノリとシンゴが衝突する模様。サバイバル生活のリーダーを選ぶ時のいざこざを思い出しますね。目に見えて悲しそうな人だけが悲しんでいる訳じゃないんだよ……とシンゴが知ることになるのかな。
 やっぱりサヴァイヴメンツは女の子の方が精神的にタフですなー。

 ハワードとシャアラの無事は信じて疑いませんが、果たして再会までにもう一捻り入るのか、シャアラの眼鏡は復活するのか、ルナのリュックはどうなったのか、早く次回を見たくて仕方ありません。

 
最終更新: 2004/08/22
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