鯖の佃煮

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#48 「あなたはあなたじゃない」

 「あなたはあなたじゃない」――ルナ

 突撃ドローンバスターズ、サヴァイヴ先生のイケナイ診察、魔女っ子ルナ容赦なし!の巻。

 一週休みで久々のサヴァイヴですが、今回は前置きなしですぐに本編突入。

 リフトで上昇する偽ハワシャ、驚くメノリ達に事情を説明するシンチャコ組。
 ベルメノは全然2人のことは疑っていなかったようですが、しかし、明らかに異様な2人の行動を目の当たりにしたのと、あと「ナノマシンの仕業」という逃げ道があるので割合すんなりと2人の背信行為を受け入れた模様。
 が、「じゃあ元の2人には戻れないのか?」というメノリの言葉が発言者当人の気持ち以上にルナにショックを与えてしまいます。
 2人を追って、リフトで上に向かうルナ。サヴァイヴの手先となった2人を思い闇雲に前に進もうとしますが、同行してきたカオルに引き止められ、とにかく一旦下に戻ることに。
 カオルナ濃度120%な一幕でしたが、ルナを追って上昇しかけているリフトに飛び乗ったり、仲間の心配で一杯なルナを切なく見上げたり、後ろからルナに駆け寄ってドローンの光線から回避させたり、ルナをかばって自分が下で着地したり、ひたすらひたすらにカオル→ルナなのが泣けます。矢印が相互方向じゃないのが。ことに、リフト上でルナを見上げる表情の切なさといったらよう。ルナに関してはヒーローでヒロインなカオルたんなのでありました。うう。いつか2人と同じくらい心配してもらえるといいね。

 迫りつつあるドローンがモニターに映し出され、今後の方針を話し合うサヴァイヴメンツ。つーか本当にハワシャを逃がしたらどうなるかってこと、シンチャコは考えてなかったのか。2人が偽者ってことで、それなりにこのメカ担当コンビもテンぱっていたんですかね。結局、隔離エリアを放棄して一気にメインルームに乗り込むことに。
 問題になるのがドローン対策なのですが、対抗手段としてシンゴが持ち出してきたのが……掃除機?
 ここねえ……、見ていてものすごーく感情処理に苦慮しましたですよ。状況はシリアス、画面はギャグ。笑えと言うのか深刻になれというのか、どっちなんだサヴァイヴスタッフよ。
 シンゴが発見してきたブツは「テラフォーミング用の赤外線反射物質噴霧器」(byタコ)というものらしいですが、カオルがあまりお役立ちグッズを創作しなくなったと思ったら、代わりにシンゴがいろんなものを見つけてくるようになりましたな。メカメカしい世界だからか?
 で、シンゴは鏡でドローンを混乱させた経験から(#44)、これでドローンのセンサーを攪乱できないかと提案。タコに疑問を呈されると、ためらいもなくタコに発射し自らその効果を実証します。#40のサラダを巡る皆のリアクションもそうでしたが、ラリったタコを見る皆の動きがとても可笑しいです。……やはり笑えという展開なのかコレは。

 と、和んでいる暇もなく、ついに隔離エリアにドローンが到達し、否応なしに噴霧器に頼ることに。
 物陰に潜みつつ、カオルが一つの疑問を口にします。
 「何故ハワード達はすぐ俺達を殺さなかったんだ」
 殺すなんて物騒な単語がすんなり出てくるあたりがこの人らしいですが、そう言われれば確かにその通り。するとアダムが「戻ってからの2人はいつもルナのことばかり見てた」、返してカオル「俺もそう感じていた」。
 ……お前は。
 ルナべったりのアダムが気づくのはともかく、カオル、お前はよー、皆の前でそーゆーこと言って平気なのかよ、ええ。
 しかしカオルの話はまだ続きます。「もしかして2人はルナの持つ不思議な力を調べていたんじゃないのか?」 そして#46で溺れかけたアダムを助けた時のことを引き合いに出し「一瞬だが、アダムが浮いたように見えた。あれはルナの超能力のようなものじゃないのか」と、#39でナノマシン発言した時と同様、話をガンガン展開させます。柔軟というか、結構謎なカオルさんの思考回路。そいでもってルナを心配する割に、実は容赦ない……つか問題を突きつけるだけでフォローがありません。これも#39と同様。行動だけしかしないから気持ちが相手に伝わらんのじゃないか? シンゴは「もしかしたらナノマシンのせいかもしれないよ」と全部ナノマシンのせいにしてしまいたいよう。
 ただ、ここで話題に出ている「不思議な力」ってテレキネシスっぽい能力のことで、アダムとのテレパシー通信は別勘定みたいなんですよね。そっちは完璧に「ナノマシンの仕業」ってことでオーケー、みな了承済みなんでしょうかね。
 ともかくドローン侵入により会話中断。
 カオルとシンゴが掃除機――もとい噴霧器を担いで(2台あったらしい)、ドローンに噴射……すみません、やっぱり笑ってしまうっス。今までのシリアスな雰囲気は何処へ。
 で、ドローンがコントロールを失っている間に、サヴァイヴメンツはリフトに乗り、いよいよハワシャ奪還に向けてメインルーム殴り込み開始です。

 サヴァイヴ様がハワシャに何やら策を授けている間に、カオシンが先頭に立ちドローンと見れば噴霧器を向け、サクサク前進する一同。
 ここでの皆の装備は、カオルとシンゴが掃除機担当、ルナ・メノリ・ベルが槍担当。ベルは背中にも予備の槍を2本背負ってます。都合5本の槍が。いつの間にそんなに作ってたんですか、アナタ達。
 順調に侵攻を続けていたサヴァイヴメンツですが、さすがに通路一杯のドローンの大群にあっては足を止めざるを得なく、カオル・ルナ・チャコ・アダムとベル・メノリ・シンゴ・タコの二手に分かれてメインルームを目指すことに。船内地図を記憶しているチャコとタコがそれぞれのグループの先導を務めます。
 そして。

 ベル達の前に立ちふさがったのはシャアラでした。
 動揺を隠しきれないベル達に対し、無表情なまま何のためらいもなく光線銃を撃つシャアラ。ベルの言葉にもまったく耳を貸す様子はありません。噴霧器は通用しない相手、しかも怪我をさせる訳にもいかず顔を見合わせるメノリ達ですが、ベルが意を決し、上着を囮にしてシャアラに当て身を食らわせます。いや、男を上げますねえ……。

 ドローンが多い方の通路を引き当ててしまったルナ達は壁にもたれて青息吐息。床は、と見ればドローンがゴーロゴロ。(でもセンサーを一時的に麻痺させているだけなら、直にまた復活して追いかけてくるんじゃないでしょうかね、アレ) ルナにはまだ疲れが残っているようですが、カオルの問いに何とか笑ってみせます。再び走り出す3人と1匹。女のコにあんまり無理させちゃいかんぜよ、と思いましたが、多分カオルはルナ達の何倍も走り回って殺虫剤……じゃなかった何たら物質を散布して回ったんだろうなあ。容易に想像できる情景に思わず目頭が熱くなってしまうですよ。
 遂にメインルームへと至る扉まで辿り着いたルナ達、しかし、待ち受けていたドローンの大群に一瞬の隙をつかれ、カオルは持っていた噴霧器を破壊されてしまいます。……ま、まぬけが。
 もはや対抗する術もなく(ルナの持っていた槍は?)身を固くする3人と1匹。その時、ルナの特殊能力が発動、ボタボタと落下するドローン達。この事態にルナが一番呆然とした顔をしていましたが、あれだけの力を発揮して汗一つかいてませんよ、この子は。

 招くように開いた扉をくぐったルナ達は、そこに倒れているハワードの姿を発見します。カオルの制止も聞かず走り寄るルナ(とそれにくっついてるアダム)は、まんまと罠にはまり光線銃を突きつけられるハメに。
 あのさー、カオルもこういう時こそ、ルナをフリーにしておかないで、探検隊長兼戦闘班長として自分ががっちりチームを仕切ればいいんじゃないかと思うんですがねー。不思議パワー持ちのルナに怖じ気づくようなキャラでもないでしょ、君。
 カオルが役に立つ回とそうでない回とのギャップが激しすぎてなんだかなーという感じです。それとも、美しく言えば、常にルナの行動を後ろからフォローする、有り体に言ってしまえば、あくまでルナの行動には手を出せないヘタレという設定なのか>カオルたん
 さて、カオルvsカヲルが開始されるかと思いきや(結構期待したのになあ)、あっさりカオチャコは後退を命じられ、いよいよサヴァイヴ様のご登場です。
 メインルーム上部に出現する青い光。この部屋自体がコケ脅かし的に闇に包まれているのですが、サヴァイヴ様本体はどんな感じになってるんですかね。
 サヴァイヴ様はのたまいます。
 ルナの持つ力が欲しいと。ナノマシンでは説明できない不思議な力、その力の源を知り、我がものとすることができれば私は更なる進化を遂げることができよう、と。
 ……ルナの力が欲しいなら、そもそもルナ達はメインルームを目指していた訳だし、ドローンの大群をもって出迎える必要はなかったような気がしますが。まだルナのデータ収集中だったから? それとも自分の力を誇示し、余計な分子は排除するため? だからベルメノ組に向かってきたシャアラは攻撃してきたと? でも余分な一方を殲滅したいならそちらの方にこそドローンの群を差し向かわせればよかったのでは。大量のドローンとハワードは対カオル用ですか?
 視聴者の疑問をよそに、時々とんでもないことをやらかすこのアニメ、何とサヴァイヴ様は「調べさせてもらう」とルナを宙づり磔にし妙な光線を当てやがりました。呻くルナ。いったいどんな健康チェックをやってるんですか、サヴァイヴ先生!
 が、診察結果は「異常なし」。何故お前にだけ特別な力が備わった?と訝るサヴァイヴ様ですが、まあそれには最大無敵かつ身も蓋もない理由がある訳で――だって主人公だもん。
 そこへ、すっかり忘れていたベルメノシンタコ+シャアラ到着。シンゴが持っていた銃はハワードにより一瞬にして蒸発させられ(嘘だろ)、シャアラはハワードの元へ、それ以外はカオルの方へとさっさと組分けされてしまいます。
 ルナの「大切な仲間」発言を聞いて、サヴァイヴ様は「実験によるとお前の力は仲間を助ける時に発揮されるようだな」と過去の実験歴をご披露。
 ハワシャを捕らえてナノマシンをぶちこみ(実験その1)、アダムを危険に晒し(実験その2)――と、ルナの力を調査・確認するためだけに命をモノのように扱うサヴァイヴの所業に怒りを募らせるルナですが、サヴァイヴ様はあくまで実験分析モード。むしろ直接ルナの力を観察できる機会とあって、わくわくとルナに力を見せろと迫ります。
 でーもー、ルナの念動力って、仲間を助けるというよりアダム専用の力のような気がするんですがねえ。今でこそ自由自在に使いこなせるようですが、長いことアダムのためだけに発現していたし。それは、ルナにとっては仲間内でアダムが一番弱い存在だから? それともナノマシンで繋がれた存在だから?
 そしてナノマシンに依らないルナの力は感情によって導き出されたもの。それを欲するというのは、ある意味サヴァイヴ(機械)の敗北ともとれるのですが、サヴァイヴ様はそんな些末なことには頓着なさらないようです。ただの有機体、力だけが必要、と人間を切り捨てているつもりで、その実、人間的存在に近づこうとしている人間不要論者のサヴァイヴ、果たしてそのことに気づいているのかいないのか。

 赤色発光しつつも一度はアダムに呼び戻されたルナですが、サヴァイヴに対話を拒否され、ルナの怒りを呼び覚ますためだけにハワードにアダムを撃たせるに至って怒りがMAXゲージに。しかしそこでルナが思い起こしたのは、今は亡き父の面影でした。
 #38で出てきた父との思い出。
 “人類用に他の星を改造することは傲慢な行為ではないか”、“生命の存在しない惑星に少しずつでも命を生やしていきたい”って、どっちやねん矛盾してんぞ父ちゃんって感じですが、ルナの心には強く響いたようです。更に厳密にいうと、ルナ父とハワシャは全然何の関係もないのですが、ルナの中では関係あるんだから問題ナッシン、重要なのはいかにルナのハートに点火するかということで、今やばっちり火がついてしまったルナ、
 確信に満ちて――覚醒。(としか言いようが……)

 “ハワードとシャアラはアダムを傷つけはしない。私達は仲間なのだから”
 “私達は命の木を受け継ぐ仲間だから”
 意識を拡大し、暗闇から一転、光に満ちた不思議空間へ。ルナを始め次々と仲間達が現れ、囚われのハワシャに呼びかけます。……コレ、ルナはともかく、いきなり精神世界にふっとばされた他のメンツはどう感じたんでしょうかね。慌てることなく状況に順応してましたが。ついでにいうとサヴァイヴ様にはどう見えてるんでしょうか、この光景。で、アダムもすっかり仲間認定されてるのね。まあルナにとってはそうかもしれませんが、私はどうも「ヤツはお客様」意識が抜けないのでちょっと違和感が残ります。
 頑なに「私達はサヴァイヴと共にある」と言うハワシャに、ルナは祈りをこめて「あなたはあなたじゃない」と。
 他の誰でもない、あなたはあなた。
 存在自体に揺さぶりをかけられ、仲間の存在を告げられ、遂に2人は失っていた記憶を取り戻します。自らの生を、そしてそれを共にした仲間を再確認し、これでハワシャも正気に戻ったかと思いきや。
 自力でサヴァイヴの拘束を解いたルナは右手に力を集め――仲間からの光もそれに合流し――慈愛に溢れた表情でハワシャに呼びかけ、そして容赦なく光をぶつけます。2人の悲鳴にも何ら怯むことなく光を当て続けるルナ。こーわーいー。何が怖いって、自らに正義があると信じて疑わないその顔が。これがホントの確信犯って奴か、と思わされる表情です。っていうか、悪性ナノマシンを除去する照射機の出番は? てっきりアレでどうにかするもんだと思ってたんですが。もっと穏当にやりましょうよう。(んで、ナノマシン解除直後のルナの表情がまた微妙なんだ、これが)
 やがて、ナノマシンと思しき青い光が飛び去り、崩れ折れる2人。
 呆然とするサヴァイヴを尻目に、ハワシャの呑気な表情と声が復活です。どうやら操られていた時の記憶はない模様。ナノマシンと共に吹っ飛びましたかね。
 今度こそ本当の再会シーン――ハワシャが元に戻ったら一気に画面が華やいだ感じで、この2人の影響力はすごいですよ、本当に。泣きながら抱きつくルナ、頭から突っ込んでるシンゴ、ハワードの頭に飛びついてるチャコ、ちゃっかりハワード方向に行ってるメノリ、カオルも団子に巻き込んでるベル(心得てますな、さすが年長者)、不慣れな感じのカオル、メガネがずれてるシャアラ、びっくりするばかりのハワード。
 オマケに、すっかりお祭り状態の彼らに唖然呆然としつつちょっぴり癒されてる感じもあるサヴァイヴ。
 しかし不穏な地震が一同を襲い……というところで、来週へ。

 いやあ、とにかく絵が綺麗な回でした。そしていつもに増してアダムがルナにベタついていたような。
 ハワシャが記憶を取り戻すくだり、単に個人の存在を祝福するのでなく、集団と個の関係を意識した上で、「あなたはあなた」と個人を確立しようとするところが、さすが群像を描いてきた「無人惑星サヴァイヴ」という感じでしたか。オープニングとの連携、#1からの台詞の持ち出しも効果的だったように思います。
 ただねえ、確かに再会ラストは盛り上がったんですが、それに至るまでが何つーか、もっと違う展開もアリだったんじゃないかという気がして仕方ないのですよね。皆をかき回すハワードが長いこと不在だったので特にそう感じるのかもしれませんが。ヤツがいたらメインキャラが背景になってしまうなんてこと許すはずがないですから。
 つまりはルナの力の顕在化を促すためだけのハワシャ洗脳だったんですかねえ。話の内容が、サヴァイヴメンツ内のことから、対サヴァイヴ、更にはこの星の行方、なんてところにまで及んでいるので、各キャラクターの反応や描写に時間を割く余裕はないのかもしれませんが、彼・彼女らの反応が簡略化されてると、やっぱりかなり物足りない気がします。ことに仲間がサヴァイヴの手先とされて……なんて、彼らにとっては重大な問題なのに。あくまで視点はサヴァイヴメンツレベルで、という訳にはいかないのかなあ。個人戦より団体戦が見たいのですよう。

 それにしても、予告でルナが強調していた人間ならできることって何でしょうかねー。どうも考えつかないのですが、そこから人間讃歌、ひいては環境と人間の対立及び機械と人間の対立の解消というところまでブチ上げちゃうのかな。
 ルナの言ってた、命の木を受け継ぐ云々かんぬんが定住エンドの前振りだったら嫌だなあ。そこのところがちょっと心配です。

 
最終更新: 2004/10/03
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