鯖の佃煮

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#49 「このままではこの星が…」

 「でも、このままではこの星が……」――ルナ

 坊ちゃまはいんすたんとらあめんがお好き、下に参りまーす、上に参りまーす、の巻。

 地震が起きたところからすぐに本編突入。

 突然の地震が収まった後、各地の惨状を伝える複数のモニター画面が現れ、サヴァイヴはこの星で通常の地殻変動とは異なる活動が起きていることを明かします。このままではこの星の生態系が崩壊してしまう、と聞かされ「ほーかい!?」ハモるサヴァイヴメンツ。
 己の手に余る事態に、ナノマシン以上の力を持つルナの力が必要とサヴァイヴはルナを付け狙っていた模様。それを告げるためにわざわざスポットライトでルナを照らすというのは威嚇ですか趣味ですか>サヴァイヴ様
 ルナの力をよこせというサヴァイヴに、散々危険な目に遭わせておいて今更、と猛反発する人間側。まあ、人間に助力を請うというより、緊急事態に使えるものは人間でも道具として使う、というのがサヴァイヴの態度だからして、サヴァイヴ様的には矛盾はない訳ですが。
 「所詮機械だな」と小馬鹿にした態度を取るハワード。あの寡黙だった偽ハワードの面影はカケラもありませんな。人間にプログラムをインプットしてもらわなきゃなにもできない、と言う彼に、しかし足元から憤然と非難の声が。前回から引き続き乗っかっていたハワードの頭から飛び降りたチャコとそれに与したタコでした。チャコに至っては「サヴァイヴはんかてこの星を守ろうと一生懸命やったんや」といつになく“はん”付けまでして擁護する始末。えーと、そのサヴァイヴはんは一生懸命のあまりチャコのご主人様であるルナにまで手を出そうとしてるんですけど。それはいいのか? ……いいのか。でも、いくらハワードの言い様にムカついたとしてもチャコのこの言葉は、#42でまるっきり人間側に立った発言をしていただけにかなり意外だったり。というか、そんなことを言っている場合じゃないだろう。
 肝心のルナは、この星の行く末についてかなり心を乱されている様子。こっちもねえ、自分の身が危ないってのにそんなことを言っている場合じゃないだろうって感じなんですが。それとも折角サヴァイヴと直接話ができる機会だけに、種々の問題に決着をつけたいってところなんでしょうか。
 が、ルナの心配な気持ちに付け込まないで、宇宙船の機能を確認しようとメインルームを出ようとしたハワシンメノをドローンで威嚇したり、あくまで力押ししようとするあたりサヴァイヴ様も気位がお高うございますな。
 ドローンの登場に、両手で皆を抱え込むようにして仲間をかばうカオベルは例によっていつもご苦労様です、という塩梅ですが、前に出るチャコタコも勇敢です。
 なんだかんだで、「私達もこの星で何が起きてるか知りたい、だから自分達にも調べさせて、攻撃はしないで」というルナに対し、「すべてのデータは分析済み、だからお前達がやっても無駄」とすげないサヴァイヴ様。
 目指すところは本当は同じなのに、なかなか条件が折り合わないルナとサヴァイヴ――膠着しつつある局面を打開したのはハワードでした。(と言ってみると格好いい)
 「万有引力の法則だってインスタントラーメンの作り方だって、発見したのは人間なんだぜ。知らないのか?」
 ――知らないだろう。
 ってか知ってる方が驚きですが、「一見関係のないことでも結びつけられる思考が人間にはあるんだよ」と、うまいことシンゴが引き継ぎ、更にルナやメノリまで加わって、とにかく人間の想像力の可能性に賭けてみろとの口八丁、見事サヴァイヴにドローンを引き上げさせることに成功します。すごいぞサヴァイヴメンツ。
 しかしサヴァイヴも、再びルナに光を当て「不審な行動があれば即座に処分する」と、これは明らかに警告することも忘れません。……前から疑問でしたが、ルナの力を取り込むってどういう方法をサヴァイヴ様は想定してらっしゃるんでしょうかね。
 ルナ側もなあ……ルナの言う“私達”はちょーっと怪しい気がしますが。少なくとも宇宙船で脱出主張組は、たまたま流れ着いただけのこの星のことなんか知ったこっちゃない、という気分が多分にあるだろうし。乗りかかった船、と言えるのはやはり余裕のある時だけでしょう。こうでも言って協力姿勢を見せておかないとサヴァイヴに攻撃を止めさせることはできないってコトなんでしょうが、でもルナって本気で、私達みんながこの星で起きていることを知りたい、って思ってそうだからなあ。いつまでも自分がグループの代表意見を述べているつもりでいると、そのうち足をすくわれることになりそうで心配です。まーみんな仲間思いだから今のところ揉めないで済んでますけどねえ。
 ともかくも自由を得たサヴァイヴメンツ、成り行きのままにフィールド調査班とデータ分析班に分かれて作業開始です。

 データの分析はシンチャコに任せ、最寄りのテラフォーミングマシン、つまりメインテラフォーミングマシンへと赴くルナ達。案内役のタコが出がけにひと騒動やらかしたので、オープンカー様の乗り物の操縦はみんなののりもの係・カオル君が担当です。この時が一番ゆっくり話ができるタイミングだったと思うんですが、結局サヴァイヴに囚われていたハワシャへの事情説明とか、ハワシャ側からの事情説明とかは一切なかったですな。偽ハワシャだった時の記憶はどうなってるんでしょう。自分達の境遇にちょっとは疑問を感じたりしないのかしら……と思いつつ、まあハワシャだしね、で納得できるのがなんともかんとも。
 ナビシートから眼下に広がる緑野を眺めやり、荒れた大地に緑を復活させた人間とそしてサヴァイヴの労苦に思いを馳せるルナ。うわー、だってサヴァイヴはそう言う風にプログラミングされた機械なんだし、なんて理屈は通じなさそうな顔ですよ、ルナさんてば。そんなルナをストーキングしてるサヴァイヴ様。嗚呼すれ違う2人の想い……って、いやそれ切なくないから。

 火山の頂きに設置されたテラフォーミングマシンに到着したフィールド調査班は、この施設についてタコから説明を受けつつ、早速現地調査に乗り出します。観測できるデータはすべてサヴァイヴが把握しているはずなので、岩石や地下水のサンプルを集めることに。
 タコの案内で調査坑用の昇降機に乗る調査班。タコのエレベータガール風身振りってチャコの言語システムの中から得た概念なんでしょうか。でもエレガについてちょーーーっとばかし誤解があったようです。「下へ参りまーす」と言ったはいいが、次の瞬間絶叫マシンと化すエレベータ。一体何m垂直落下したことか。それでも停止時に怪我ひとつしてないなんて、みんなホント丈夫です。ベルをクッション代わりにして床面に折り重なるルナ達、そして一人、側面のガラスに縋り付いているカオルの姿が一層笑いを誘います。何スか、そのガラスに残した爪跡はー。ひ、必死なのは判るけど、こっちも爆笑を堪えるのに必死ですよ。普段カタいヒトが崩すとインパクトが大きいという見本のようです。(その点、メノリンは稀少価値がやや薄れ気味。もうお約束の域だから) #4で海蛇にシャトルを振り回され床に思い切り叩きつけられたはずが、次のカットでは何事もなかったかのように立っていた君。それが今では愉快な爪跡。この差はいったい何。きっと多分これが今の彼のスタンスなんでしょうねえ。よう立派なギャグキャラになりおった。涙で前が見えません。一体どんな顔して立ち上がって振り返ったんだか。んで、おまけに、空気圧で押されたかタコのへこんだ頭がボーンと復活。……中身、カラなのか?

 途中、複数の年代の地層サンプルなどを確保しつつ(えらく浅い横孔でしたが、あれで千年前の地層に到達しているのでしょうか)、火口深くまで下降してきた調査班。マグマのサンプルを採取しますが、そう簡単に戻れないのがこのアニメ。突然マグマの活動が活発化し、地上では地割れや大規模津波が起きる大惨事、そしてこのエレベータでは機械の故障が発生してしまったのでした。
 「何たって千年前の機械ですからねー、いつかこんなことになると思ってたんですよ」と、ユカイな手振りつきで抜かすあのタコ頭のネジをギリギリと締め直したくなったのは私だけではありますまい。しかも「この中はバッチリ冷却システムが働いていますから安全デース」と自慢していた冷却システムにまで不具合発生。あっと言う間にエレベータ内は灼熱地獄に。
 ところで、タコが壊れた機械についてあれこれ言うのを聞いていて何とも妙な気分になってしまいました。人から見れば同じ機械でも、タコにとっては、タコチャコサヴァイヴら何らかの自意識があるものと、そうでないものとでは明確な区別があってしかるべきもののようですね。そりゃそうか。

 一方、この非常事態はデータ分析班のシンチャココンビにも伝わっていました。何とか閉じこめられた皆を救おうとするものの、シンチャコの場所からの直接コントロールは不可。歯がみする1人と1匹はサヴァイヴに呼びかけますが、サヴァイヴは、密閉生の高いシャフト内にはドローンの入り込める隙間はなく、よって救出は不可能と断定、それ以上動こうとしません。……サヴァイヴの使い魔(違)って、本当にドローンしかいないんだ。淋しい王様だなや。
 が。何やら閃いたシンゴ、「大丈夫、僕に考えがあるんだ」と自信に満ちた目で、サヴァイヴにくってかかるチャコを押し止めます。
 いやー、今回のシンゴったら、やけに輝いてますね。サヴァイヴを説得する時の前向きさ、分析にかかる時の頼もしげな親指サイン、異常の原因は惑星外にあるのでは?という思考の柔軟さ。だてに2年飛び級はしてないぞ、と天才児の面目躍如です。

 さて、エレベータ内では、あまりの暑さに皆が脱ぎ始めていました――もとい、皆がへばり始めていました。ただの我慢大会なだけでなく、脱出不可能の閉鎖空間、おまけに外は煮えたぎるマグマと、かなりのストレスがかかっているはずで無理もありません。ルナが超能力を発揮しますがエレベータを押し上げるほどの力はなく、どうにもならない状態です。「こんな時にチャコさんとシンゴさんがいてくれたら」と親密さのほどをうかがわせるタコ。この短期間でいつの間に。自分はタコ呼ばわりされてるのに、相手のことはちゃんとさん付けです。エライ。
 そんなタコの弱音が届いたか、スピーカーからチャコとシンゴの声が。「チャコ、シンゴ!」 本日2回目のハモリです。
 シンゴ考案の救出作戦は、エレベータ付属の冷却用の液化冷媒ガスをシャフト下部の熱で爆発的に気化させ、その圧力でエレベータを一気に上まで押し上げるという、シャフトの密閉性の高さを逆に利用したものでした。安全性を度外視した計画を聞いて「無理だ」と言うサヴァイヴに「無理を承知でやるのが人間なんや」とあたかも自分が人間でもあるかのようなチャコ。ある時は機械寄り、またある時は人間寄り。いったい君の立場はどっちなんだチャコ。しかしサヴァイヴは「人間の想像力の可能性」と考え込んでしまいます。
 ……あのー、シンゴのひらめきはともかく、それを実行に移すのは想像力と違う気がするんですが。どっちかっつーと想像力に欠けるが故の無謀に近い気がすんですけども。実際のところ、如何に緊急事態とはいえ、どの程度シンゴがこの計画の危険性を認識していたか、どれほどの覚悟でもってコトに当たっていたのか聞いてみたいような気がします。いや、知らない方がいいのか。
 チャコの励ましとシンゴの指示で計画を遂行するタコ。シンゴの目論みは成功で、激しく上に参りまーす状態のエレベータは調査抗の天辺まで上昇することができました。扉部分をアームで壊してエレベータを固定、急げ急げの脱出シーンの始まりです。フロアとは結構段差があるので、まずベルが飛び降り皆を受け止めます。ところが、ルナがベルに抱き留められたところで(ベル役得だねッ)、中にカオルとタコを残したまま落下しかけるエレベータ。が、すんでのところで支えたのは、待機していた(?)2機のドローンでした。隙間から引っ張り出されるタコとカオル。直後、エレベータはドローンの残骸と共に落下、まったくもって危機一髪な場面でした。サヴァイヴがルナだけじゃなく、ちゃんとサヴァイヴメンツ全体の重要性を認識しててくれてヨカッタねー>カオルたん ここまできて墜落死では浮かばれませんわ。
 脱出成功にとびあがって喜ぶシンチャコ組。律儀なチャコはきっちりお礼を言ってます。「サヴァイヴはん、おおきにー」
 テラフォーミングマシンの外へと出るためのエレベータ内部をクローズアップするサヴァイヴ。ハワードはベルにおぶわれメノリはカオルの肩を借り(シャアラは意外とフツーの顔なんですなこれが)、と若干ヨタってはいるものの、全員生還です。恐らくそれはサヴァイヴが予測し得なかった光景で。ここの視線の寄り方が感情を持たないはずのサヴァイヴの驚愕ぶりを無言のうちに表しているようで、何とも印象的でした。
 地上に降り立ち、眼前の宇宙船(サヴァイヴ)を見下ろしながら「サヴァイヴが助けてくれたのね」と呟くルナ。すれ違ってばかりだった2人の気持ちが一歩近づいた瞬間でした。(だから違うって)

 早速、予定外に命懸けで持ち帰ることになった試料を分析すると(エレベータごとお釈迦になっていなかったところを見ると、最後に採ったマグマ以外はカオルが肩に掛けていた袋の中に入れてたんですかね)、複数の地層のサンプルの中で何故か千年前のものだけ結晶構造が異なっていることが判ります。
 「千年前に大きな重力の変化があったのかもしれない」と言うシンゴ。即座にそのようなデータはないとサヴァイヴから否定が入りますが、シンゴは「この惑星外から影響を受けた可能性は?」となおも食い下がります。「もし千年前にこの星で起こった異変の原因がそれやとしたら、今起きてる異変もそれで説明がつく」とチャコ。
 それとは何かと問われ、シンゴが憎たらしいほどの間を取って発したのは懐かしい単語でした。
「重力嵐」

 「じゅうりょくあらし!?」と三度ハモったところで、突如アラームが鳴り響き、来週へ。

 人間と機械の対立の構図の中、ルナの女神パワー大炸裂で幕を下ろした前回。続く今回は、更に人間の愛と英知の素晴らしさを歌いあげる胡散臭い回になるかと思いきや、基本的にはその路線ながら、なんのなんの強化ギャグでコーティングされたドタバタストーリーが展開されるとは誰が予測しえたでしょう。
 作中出てきたのはフリーフォールでしたが、見ているこっちはジェットコースターに乗った気分。あれよあれよと話が転がる中、それぞれのキャラクターの仕草や表情が可笑しくて可愛くて、しかも萌え。ハワードのチャコ肩車とか、タコのネジ外れに呆れる一同とか、タコと話すシャアラのきょとんとした顔とか、自画自賛するタコとか、ハワードのへそチラとか、カオルの袖まくりとか、めっずらしいカオメノシーンとか、大層楽しませてもらいました。
 やっぱり話を展開させるにあたってのハワードの功績って大きいですねー。ハワードがああだこうだと動くから、それにあわせて皆が反応し、いろんな表情が生まれる。沈思黙考タイプだけでは雰囲気が暗くなってしまっていけませんや。
 しかし予想外に、ルナ個人の不思議パワーからサヴァイヴの注目をそらし人間全体の有用性を認めさせた回でしたな。超能力にばかり頼っていてはいけませんよ、うん。でも見方を変えれば、人間はこの想像力をもって星の環境をも乱すほどの文明を発展させてきたともいえる訳で、いつサヴァイヴが“私の管理能力を超えるイレギュラーな力は危険”と判断しないとも限らないのですが、今のところサヴァイヴは星の未来を案じ未知の可能性に幻惑されているみたいですから、当面そんなことを言い出す気遣いはなさそうですね。それに案外いい人っぽい面もある感じだし。全知全能なイメージがどんどん頑固爺さんへと変化してゆきますわ〜。

 あと、「人類の文明によってもたらされた環境破壊が大規模な地殻変動を引き起こした」ことがサヴァイヴの人間不要・人間有害説の根拠となっている訳ですが、地殻変動が重力嵐の影響によって起きたものなら、それは濡れ衣というものなのでは。今回のは、サヴァイヴが論を改めるきっかけになるかもしれない展開でもありましたね。ただ、千年前にやってきたかもしれない重力嵐関係のデータはサヴァイヴには一切入力されてなかったみたいですが、アダムの仲間は宇宙船も建造できるような文明を築いていたのに、人工衛星を打ち上げたりとか宇宙方面の観測はしてなかったんですかね? 一気に人類滅亡となったなら話は別ですが、不意打ちだとしても、あんな影響大なもの、記録に残ってないはずはないと思うんですが。それともシンゴの仮説が違っているとか? ここまできてそれはアリ?

 次回は、3日後に惑星に衝突するという重力嵐を巡って、宇宙船でこの星を脱出するか、宇宙船を使って重力嵐を消滅させるかで、サヴァイヴメンツ内で対立が起こるようですが、ルナはこの星大事派決定だし、ハワードはすぐ脱出しようと予告で言ってますが、残りのメンツはどちらを支持するんでしょうかね。まともに宇宙船を扱えるだろうカオルシンゴチャコあたりがどちらに付くかもまたひとつの焦点となりそうですが。
 ところで、いくらこの星のためとはいえサヴァイヴ爺さんが自爆の道を選ぶとは思えないので、つまり宇宙船はサヴァイヴ本体とは別物ってことなんでしょうか。管理システム切り離し可能とか?

 アダムがルナべったりなのは、薄々別れを予感しているからなのかなーと思ってみたり。

 
最終更新: 2004/10/10
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